2017年1月24日
家族や財産が国内・海外に分散! 相続税や相続手続きはどうなる?

家族や財産が国内・海外に分散! 相続税や相続手続きはどうなる?

グローバル化の進展で、ヒト・モノ・カネは複数国にまたがって動いている。親の相続でも、子どもは海外に居住していたり、親が海外に不動産や金融資産を保有していたりするケースが増えている。日本国内で相続税の課税対象となる人と財産、国によって異なる相続税の有無やかかり方、手続き方法などを知っておこう。

親が国内に住んでいれば、ほとんどの場合、国内・海外の財産が課税対象

「相続税は日本に住んでいる人が対象で、国際結婚して海外に住んでしまえば関係なくなるの?」「親が海外で購入した不動産や、海外の金融機関で運用しているお金なら、相続税はかからないんじゃないかな…」
―こんなふうに思っている人はいないだろうか。
それは大きな間違いだ。

日本の相続税は亡くなった人(=被相続人)と相続人の両方が、国内に住所があるかどうか、ない場合は住所のなかった期間によって、課税される人と課税される財産の範囲が決まっている。
現在でも親が日本国内に住んでいる限り、大半のケースで相続人となる子どもは課税対象になり、親が所有する国内・国外のすべての財産が課税対象になっている。
2017年4月以降はさらに、国内外の全財産が課税対象となる人の範囲が広がる見込みだ(図表1参照)

国内外の全財産が課税対象となる人の範囲が広がる見込み‹™

「今年度の税制改正によって、日本人家族の場合で国外にある財産が課税されないのは、被相続人・相続人ともに相続開始前10年以内の間で一度も、日本国内に住所をもたない場合だけになる」と解説してくれたのは、税理士の早河英太さん(2017年1月時点での予定)。親が国内に住んでいる場合はもちろんだが、親や子が海外に移住している場合も、今後はその期間が10年を超えていなければ、相続人となる配偶者や子どもには亡くなった人の国内・国外の財産すべてに相続税がかかってくるということだ。

海外に財産がある場合、ひと昔前と違って現在は税務当局が諸外国との情報交換で、個人資産の把握がしやすくなっている。「隠していればバレないだろう」と安易に考えるのは禁物だ。

2013年から、国外にある財産が年末時点で5000万円を超える場合、翌年3月15日までに「国外財産調書」を提出することが義務付けられ、未提出や虚偽の記載には罰則規定もある。国外財産が5000万円以下の人でも、相続税の税務調査などで申告漏れを指摘されると、延滞税や加算税が課されることもある。心当たりがある人は、親の財産は国内だけでなく、国外にある分までしっかり把握しておくことが重要だ。

国によっては相続税がなく、基礎控除や税率もまちまち

「日本で相続税を支払えば、海外にある財産はその国では課税されないの?」という疑問をもつ人もいるだろう。その答えは、財産のある国や財産の種類でも異なるということ。日本だけでなく外国でも課税されるケースがあることに注意が必要だ。

そもそも国によって相続税がある場合とない場合がある。相続税やそれと同様の遺産税がある国でも、基礎控除の金額や税率はそれぞれ異なるうえ、アメリカやスペインなどは州によっても違うことがある。また、課税方式の違いで、納税するのは被相続人か、相続人かも異なることを知っておきたい。主な国の例を下の図表2にまとめてみた。

国による相続税_2上の表にある「遺産課税方式」とは、被相続人が所有していた財産全体に課税され、相続税を支払った後の遺産を相続人で分けるという方法だ。遺産全体に課税されるため、被相続人が納税するという考え方になっている。

もう一つの「遺産取得課税方式」は、遺産を分割した後に、相続人がそれぞれ取得した財産に応じて相続税を支払うという方法で、課税されるのは相続人になる。
日本の相続税は後者に当たるが、遺産はいったん法定相続分で分割して相続税の総額を求め、それを相続人が実際に取得する財産に応じて按分して納税するという独特の方法をとっている。

一方、財産を保有しているのが相続税のない国だったとしても、安心はできない。
「相続人がその財産を引き継ぐためには、国や州によって決められた手続きを行うことが必要で、現地の専門家の助けを借りても時間や手間がかかることが多い」と早河税理士は話す。

相続手続きはどの国の法律に従うかでやるべきことが決まる

複数の国がかかわる相続では、税金の問題だけでなく、被相続人の居住地や国籍、財産の種類や所在地によって、どの国の法律が適用されるかを確認することが重要になる。相続に関する法律や手続きは、国によってそれぞれ異なるからだ。

例えば、遺産を不動産と動産(=金融資産など)に分けて、不動産はその所在地の国の法律に従い、それ以外の動産については、被相続人の国籍または最後の住所地の法律を適用するという考え方をとる国がある。これを「相続分割主義」といい、アメリカやイギリス、オーストラリアなどはこの方式をとっている。これに対し、遺産は不動産・動産の区別なく、それがどこにあるかも関係なく、被相続人の国籍または住所地の法律を適用するという考え方である「相続統一主義」をとっている国もある。日本のほか、スイス、韓国、台湾などもこちらになる。

また、相続に対する考え方も2つある。

一つは日本と同様に、亡くなった人の財産やあらゆる権利・義務は、相続発生と同時に相続人に移転すると考える「包括承継主義」をとる国だ。ドイツ、フランス、スイス、韓国、タイなどもこれに当てはまる。

もう一つは、亡くなった人の財産や権利・義務はいったん裁判所の管理下にある遺産財団(エステート)に移り、裁判所の選任した人がその財産を調査・管理して、先に債務や相続税などがある場合には、それらを支払ってから、残った財産を相続人に分配するという考え方だ。これを「管理清算主義」といい、英米系の国やシンガポール、香港などもこの方式がとられている。

このような法律・制度の違いによって、日本国籍で日本に住んでいても、アメリカやオーストラリアに不動産を所有している人が亡くなると、相続人は日本と不動産の所在地という2つの国で、それぞれの法律にのっとった相続手続きを行うことが必要になる。

国際的な相続については、今後はさらに課税が強化される

人や財産が複数の国にまたがる国際的な相続では、このように税金に対する申告や財産を受け取るための手続きだけでも、簡単には済まないケースがほとんど。さらに、日本では国外財産に対する課税も強化される方向にあることは間違いない。冒頭で説明したように、これまで国外財産については、国内に住所がない期間が5年を超えれば課税されなかったのに、この期間が10年に延びることで、「5年のガマン」と思ってシンガポールなどに財産を移して暮らしている富裕層などは大きな打撃を受けるだろう。

「いずれにしても、海外に少しでも財産がある場合、相続税の申告や相続手続きは、国際相続に詳しい税理士や現地の専門家の手助けが不可欠になる」と早河税理士は話す。そのための情報を早めに集めて準備をしておくことが大切だ。

取材・文/光田洋子(インタープレス) 写真/PIXTA  
取材協力/税理士・早河英太さん 東京国税局に採用後、財務省主税局・国税庁資産課税課等で、資産税制の企画立案・審理業務、国際的租税回避スキームに対応する業務や、国際資産税に係る税務調査等に従事した後に退官。大手税理士法人を経て、現在は国際資産税や事業承継を中心とした資産税全般の申告・税務アドバイザーとして活動中。税理士を対象とした資産税関係のセミナー講師や、税務専門誌での執筆も行っている。



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