2017年1月20日
60歳になったら考えたい これからを快適に過ごすための「資産の棚卸し」

60歳になったら考えたい これからを快適に過ごすための「資産の棚卸し」

親に、いきなり相続のことを切り出すのは難しい。しかし年齢を重ねるにつれて、親も「不用品の整理」「入院した場合などに備えて、情報を整理しておくこと」の必要性は自覚しているはずだ。親自身、これからの快適な暮らしのためにも「資産の棚卸し」と、子どもたちとの情報共有を行うことが必要だ。

2015年分の相続では、相続税の納税者数が過去最高に

2015年(1月1日~12月31日)に亡くなった約129万人のうち、相続税の課税対象となったのは、前年比約83%増の約10万3000人。課税割合は全体の約8%で、現行の課税方式が始まった1958年以降で最も多い。
これは、同年より相続税の基礎控除が「3000万円+600万円×法定相続人の数」に引き下げられ、課税対象者が増えていることを裏付けている。
「相続税は、うちには関係ない」から「うちにも関係があるかもしれない」と状況は変わった。まずそれを、自覚しておく必要がある。

相続以前に、「うやむやにしておくと親自身が困る」こと

ところで相続以前に、うやむやにしておくと、老後を迎える親自身が、これからの生活で困ることがある。
例えば、突然の入院で病院から動けないという状況になったら、病床から家族に、あれこれ指示しなければならない。預貯金や支払いなどのお金関係を把握しているのが本人だけの場合、頼むほうも頼まれる側もストレスだ。
保険に加入していても、自分から請求しなければ保険金は出ない。保険証券をまとめておき、誰にでもわかるようにしておかないと、いざというときにせっかく払ってきた保険料の払い損になる可能性もある。
さらに、インターネットを介した銀行や証券会社のサービスなどの普及もあり、夫婦でも、お互いの資産状況を把握しきれていない場合もありそうだ。

年齢を重ねるごとに病院のお世話になるリスクは高まる

現役世代にも当てはまることではあるが、保険や銀行の情報は、自分に代わって家族がスムーズに動けるよう、わかりやすく一覧などにしておくのがオススメだ。

定年が見えてきたら、資産の「棚卸し」を

「高齢者」の定義を75歳にしようという議論があるほど、今の60代は若々しい。しかし仕事の定年という一つの区切りを境にライフスタイルも変わってくる。これからの人生をどう豊かにしていくか、夫婦で会話をしながら、資産の「棚卸し」について考えることをお勧めしたい。
まず自分の財産と負債を把握しよう。当ウェブサイト内の「家族の連絡帳」をダウンロードの上、該当部分に書き込む方法でもいい。
「家族の連絡帳」ダウンロード(PDF
https://souzoku.suumo.jp/wp-content/themes/souzoku/notebook/notebook.pdf

預貯金や生命保険、有価証券のほか不動産、そして負の資産である「ローン(借金)」も含めてすべて書き出す。金融商品は金融機関、支店名、口座番号など、不動産は所在地、面積も記載する。
どこに、どんな財産がいくらあるのかを具体的に書き出したら、それが今後必要かどうかを夫婦で話し合う。不要なものは解約、換金をしよう。お付き合いで加入した生命保険や、多すぎる預貯金の口座などを整理するチャンスでもある。

生命保険や、多すぎる預貯金の口座などを整理するチャンス

リタイア後の生活資金もイメージしておく

財産を把握すると同時に、リタイア後の生活資金をイメージしておくことも大切だ。
リタイア後の収入といえば公的年金だ。まず、自分の公的年金額を把握しよう。
ねんきんネット:https://www.nenkin.go.jp/n_net/

ところでリタイア後の生活にはいくら必要なのだろう?
生命保険文化センターが実施した「生活保障に関する調査」(2016年度)によると、「夫婦で老後生活を送るために必要な、最低日常生活費」は平均で22万円。回答者の分布では「月額20~25万円未満」と答えた人が最も多い。
さらに、最低日常生活費以外に必要と考える「ゆとりのための上乗せ額」は、平均12.8万円という結果だ。この調査では、夫婦2人の1カ月当たりの「ゆとりある老後生活費」は平均で34.9万円という結果だった。個人差は出てくると思うが、参考として見ておくのもいいだろう。

財産を把握すると同時に、リタイア後の生活資金をイメージしておくことも大切
自分の公的年金額を把握しよう
個人差は出てくると思うが、参考として見ておくのもいいだろう

出典:(公財)生命保険文化センター 「平成28年度 生活保障に関する調査」より

十分な資産があれば、子や孫に「生前贈与」する方法も

リタイア後の資金には余裕があるほど安心だが、「資産の棚卸し」の結果、余裕がありそうなら子どもや孫に「生前贈与」する方法もある。現役世代の「老後の不安」がニュース番組などで話題になるが、実は今現在も、現役世代にはお金がない。裏付けるのが、2015年度の総務省「家計報告調査」だ。

2015年度の総務省「家計報告調査」図 年齢別貯蓄額と負債額(2人以上の世帯)

http://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/pdf/h27_gai4.pdf
出典:(公財)生命保険文化センター「平成27年度 家計調査報告(貯蓄・負債編)-平成27年(2015年)平均結果速報-(二人以上の世帯)」より

この調査によれば、世帯主が40歳未満の世帯の貯蓄現在高が608万円なのに対して、60歳以上の世帯の貯蓄現在高は2000万円を超えている。逆に、負債現在高では、最も多いのが40~49歳の世帯で1068万円だ。
純貯蓄額(貯蓄現在高-負債現在高)では70歳以上の世帯の純貯蓄額は2306万円と最も多くなっている。それに対して40~49歳の世帯の純貯蓄額は、2年連続で負債超過の状態だ。

「書き出す」ことから始め、子どもとの情報共有を

人生100年時代といわれる今、相続は先のことかもしれない。しかし、リタイア後にライフスタイルが変わること、年齢を重ねるとともに入院などのリスクがあることを考えると、手始めとして「資産の棚卸し」をしてみることが有効だ。
□手元の資産を全て書き出す
□夫婦で資産の「必要」「不要」を話し合う
□銀行(預貯金)、証券会社(投資信託、債券、株式)の口座を整理
□生命保険を見直すとともに、相続対策として必要なら再検討する
□不動産は「時価」「相続税評価額」を把握。相続税の特例については最新の知識を得る
□受給できる公的年金の額を把握する
□調査結果などから「リタイア後」の生活をイメージする
□余裕がありそうなら、子どもや孫に生前贈与を検討する

すいぶんとスッキリしそうだ。これらのことをやり遂げた後、子どもたちに「自分たちの老後と、その先の相続」について話し、生前贈与などについても希望や意見を聞くなどすれば、話もスムーズに進むのではないだろうか。また、今まで積み上げてきたものを整理することで、リタイア後のライフスタイルに向けて気持ちもリフレッシュできそうだ。
できることからでいい。思い立ったら、始めてみてはいかがだろう。

取材・文/阿部 祐子(ライター、CFP)  取材協力/         写真/PIXTA

 

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