2017年1月31日
どうする?お墓の相続

どうする?お墓の相続

意外と知られていない墓地の相続。先祖代々の墓の相続は非課税だが、自分で建てた場合はどうなるのか?現在の墓事情を黄檗宗慈恩寺の住職であり、青少年文化研修道場の道場長でもある大田和史博和尚に話を聞いた。

お墓の相続は当たり前なの?

家(不動産)を所有している両親が亡くなった場合、相続した家を所有し続けるか、売却するかを考える人は多いだろう。そこに住むという人は、所有し続けるだろうが、空き家になる場合は、特に考えるはずだ。所有して誰かに貸すか、売却するか、悩むところだ。 このように家を相続した場合は所有か?売却か?と選択肢はすぐ思い浮かぶが、お墓はどうなのだろうか。相続し所有し続けるのは当然だと思う読者も多いと思うが、所有したくない場合は放棄できるのか?はたまた売却できるのか?今回は今問題になっている「墓じまい」を見ていきたい。

お墓に相続税ってかかるの?

不動産を相続すると相続税がかかる。お墓も土地という面では不動産なので、相続税がかかるのだろうか?
実はお墓には相続税はかからない。信仰の対象物ということもあり、課税の対象外だ。ただしすべて金(キン)でつくったなど明らかに相続税対策とわかるお墓は、課税対象になるケースがある。
「都心の一等地を買って、そこを墓地にすれば、相続税はかからないのか?」と聞かれれば"かからない"が正解だが、現実にはこれはできない。なぜなら私有地を墓地にすることができないからである(「墓地、埋葬等に関する法律」第二条5項)。 ただしこの法律が出来る昭和23年以前(沖縄は本土復帰以前)からある墓地が、私有地であった場合、例外的に墓地として黙認されている。現在個人では、新規で墓地は持てないのである。
墓地は地方公共団体か宗教法人、財団法人、社団法人の一部のみが運営主体であるため、個人の所有物にはならない。墓地はここから借りているという形になっている。

実はお墓には相続税はかからない。信仰の対象物ということもあり、課税の対象外‘図1 墓地の種類

土地は霊園の所有物、墓石などの墓標は個人の所有物になるので、相続税がかからないモノとは厳密にいうと、個人が所有している墓石などの墓標とそれに付随するものになる。 「お墓を引っ越しする場合、その費用は相続財産から差し引けるのですか?」という質問が出ることがある。これはもちろんできない。相続税の免除は生前に既にある墓を相続する場合のみである。亡くなってから故人のためにつくった墓も同様の理由で免除されない。

相続税の免除は生前に既にある墓を相続する場合のみである’
図2 お墓の相続税

では、お墓を相続した場合、どのような手続きが必要なのであろうか?
墓地にもよるが基本的には、名義変更の手続きだけで済むことが多い。費用は手数料として3000円~5000円が一般的だ。引き継いだ後は墓地管理者に管理費を毎年払うケースがほとんどだ。

お墓を相続したくない?「墓じまい」とは

さて、次にお墓を相続したくない場合はどうするのだろうか?
名義変更もしたくない、管理費も払いたくない。
お墓の相続だけを放棄したい。
こんなことができるのであろうか? 厳密にいえばできるのだが、ほったらかしにするのは道義上いいとはいえない。
お墓を無くしてしまう、いわゆる「墓じまい」をするのであれば、墓地の返還手続きが必要だ。

「墓じまい」とは、お墓を終(しま)う、雑な言い方をすれば、潰して無くしてしまうことである。家が絶える、つまりお墓を相続する人が誰もいなくなり「墓じまい」となるケースは昔からよくあることだ。しかし、最近の「墓じまい」は、家が絶えた訳ではないが、お墓を相続することや、させることが重荷になると感じ「墓じまい」をすることが多いようだ。 通常「墓じまい」をする場合は、墓地を更地にして返却する義務があるため墓石の撤去費用も必要になる。撤去したあとは、永代供養という形で、お祀りするケースがほとんどだ。 永代供養料も通常はかかるが、金額はお寺により違いがある。

ちなみに東京都立の霊園では、年間の管理料を5年以上滞納すると、使用許可が取り消され、行政手続きを経て、最終的には東京都が墓所を更地にし、納められている遺骨は「無縁塚」に改葬される。

お墓の引っ越し事例

「墓じまい」や「引っ越し」方法は地域や宗派、墓地によってさまざまだが、お墓の引っ越しの事例を一つ紹介しよう。
滋賀県に慈恩寺というお寺がある。国の重要文化財にも指定されている十一面観音立像を本尊とする黄檗宗の寺院だ。ここの住職は筆者の従兄弟という縁もあり、大田和史博和尚に最近近隣のお寺でお墓の「引っ越し」(改葬という)があったというので、詳しく話を聞いてみた。

今回、改装する人は遠くに住んでいるため、自分の住んでいる地域に、お墓の引っ越しを希望した。将来的に子どもたちへ残した場合に、遠くまで行く手間も省けるという理由からだ。
墓じまいの場合、先にも述べたが墓地は、更地にして返還する義務が発生する。
そのためには墓石の撤去などの費用がかかるのだが、今はお金がないので、寺と相談した結果、費用ができ次第、更地にすることで了承を得た。
新たに納骨をした(引っ越し先の)お寺は、住職の紹介の寺院であるため、非常にスムーズにいった。寺からの紹介は大変有効であるので参考にしたい。

滋賀県のこの地域は昔、土葬だったということもあり両墓制が多くある。両墓制とはお参りする墓と、骨を埋める場所(墓)が違う場所にある制度のことをいう。遺体の埋葬は「三昧(さんまい)」と呼ばれる場所で行い、お参り用のお墓「お参り墓」をお寺などに置く。今回の引っ越しはそんな土葬時代の墓の引っ越しである。

通常、引っ越しを含め、骨(遺体)を埋葬するには埋葬許可証がいる(引っ越しはさらに「改葬許可証」が必要)。ここは両墓制なので、お参り墓だけの引っ越しになるため、骨が無い。この場合、少量の土をお骨とみなし、目的箇所へ納骨の体とする。引っ越し先では骨を埋葬するわけではないため、「埋葬許可証」は不要となる。 
埋葬許可証は、土葬の文化が近年まであったこともあり、無くてもいい場合があったが、火葬が根付いてからは、納骨をするにあたり必要になる。

さまざまな墓の継承へ、合祀墓をつくるケースが多い昨今

大田和史博和尚によれば「最近は合祀墓をつくるケースが多い。後を見る者がいないので、そこで永代供養をしてもらうというケースが多くなってきている。樹木葬などはとても人気が高く、価格もそれ程高くないので、これからますます増えていくのではないか?」と述べた。現代のお墓事情は、多様化し、核家族化とともに、「墓じまい」や「引っ越し」などが増えている。お墓は基本的に誰かが引き継がなければならない。また、「墓じまい」をしようにも、撤去や引っ越しにはそれなりの費用がかかり、維持管理費などランニングコストもかかる。優遇されることがあるとすれば、相続税が非課税であることだ。
親が元気なうちにお墓について話し合い、必要であれば事前に準備するなども視野に入れたい。ただし相続税対策として、生前に自分自身の墓を建てるのは倫理上好ましくない。墓の土地だけ先に購入(※1)し、墓石は自分の死後に用意してもらうか、どうしても墓石までと考える人は、「先祖代々の墓」をつくり、自分の死後、そこに名前を刻むこともできる。

樹木葬など、比較的安いお墓であれば、相続税対策として生前に必要というわけでもないので、非課税だからといって慌ててつくる必要性もないだろう。
このように墓の相続や、墓じまいは、人口減少や、相続する側の個人、社会情勢などを考えると、墓を守るということを根本から考えなくてはならない。そして相続の重要な問題となるのではないだろうか。
※1墓の土地は、厳密にいえば購入ではなく「永代使用料」という契約金のようなものを支払う。(全国平均約80万円)

取材・文/大田和孝純 取材協力・監修/大田和史博(おおたわしはく)和尚・慈恩寺住職 写真/PIXTA

スーモ相続 編集ディレクター
相続についてもっと知りたいなら

関連する対策タイプ

遺言・相続Q&A

親子で相続対策を進めるために

家族の連絡帳

家族の連絡帳
年齢とともに心配になる親のこと。親も子世帯の経済面や暮らしを気遣っています。
「家族の連絡帳」をプリントアウトして、書き出すことから親子のコミュニケーションを始めてみませんか?親子がよく話し合うことでそれぞれの悩みが解決するかもしれません。
実家の相続対策を詳しく紹介

「親と実家」を考える本

表紙サンプル
表紙サンプル
目次サンプル
実家の相続対策に役立つ

カタログ請求のご案内

建築会社や不動産会社が作成しているカタログは、商品やサービスの紹介だけでなく相続にかかわる一般的な知識も得られるものもある。無料で請求できるので、会社名やカタログ名で気になるものがあれば取り寄せて、プラン選びに役立てよう。
※こちらのサイトで紹介しているカタログは『「親と実家」を考える本』にも掲載されています。下の『「親と実家」を考える本』のカタログ請求画面から、お好きなカタログをご請求ください。