2017年2月17日
海外にも相続財産が!そんなときは、

海外にも相続財産が!そんなときは、 国内・海外の両方で専門家の手助けが必要

日本に住む親が海外の口座に金融資産を保有していたり、不動産を持っていたりする場合は、それらも相続財産になり、相続時には申告が必要になる。申告方法や相続手続きは、財産のある国によって異なることにも注意が必要だ。主にどんな手続きが必要で、どのような専門家に頼めばいいかを知っておこう。

海外に財産があれば、それも含めて相続税の申告が必要!

「うちの親は昔、海外勤務のときに現地の金融機関で口座を開設し、帰国後も日本より有利だからと、そのまま資産運用で利用しているらしい」「義理の両親はハワイにコンドミニアムを買って、毎年1カ月以上、ハワイで過ごしている」
――このようなケースもけっして珍しいことではない。実際に10年ほど前から、海外に口座を開設するためのツアーや、海外不動産を購入するための現地視察ツアーに参加する人たちが増え、富裕層に限らず、余裕資金を海外への投資に振り向ける人は増えている。

とはいえ、親が海外に資産を持っていると、いざ相続となったとき、大変な思いをするのはその資産を引き継ぐ子どもたちだ。国内に居住している親が亡くなると、ほとんどの場合、親の国内・国外の財産すべてが、相続税の課税対象になるからだ。

親の相続では、預貯金や有価証券、不動産など、国内に保有する財産をすべて探し出すだけでも苦労する人は多いが、海外にまで財産があれば、それらの詳細を正確に把握することは難しいこともある。相続税を算出する際も、海外資産の評価額は、相続発生時点の現地通貨での時価になることも問題だ。金融資産なら、残高や保有数がわかれば調べやすいが、不動産の場合は現地での価格を調べるといった手間もかかる。

海外不動産の評価額には、国内のような評価減はない

相続税の課税価格を出す際に、国内の不動産であれば、路線価や固定資産税評価額をもとに評価額を算出するため、一般的には時価より2~3割低くなるケースが多い。しかし、海外の不動産ではこのような評価額の出し方はできない。海外不動産の評価額は、相続時の実勢価格(=取引価格)をもとに決めるため、現地の専門家に査定してもらうことが必要。

「ハワイのコンドミニアムなどは、日本にいてもネットで取引価格の情報を入手することが可能なので、そうした客観的な資料があれば、その価格での申告が可能なこともある。しかし、そうした資料がなければ、現地の不動産に精通した専門家に依頼して、時価を調べてもらうしかない」と、国際相続に詳しい税理士の早河英太さんは話す。
また、相続人等の条件を満たせば、海外の不動産にも「小規模宅地等の特例」は適用できるが、この特例の適用を受けるためには、日本で相続税の申告を行う必要があることも覚えておきたい。
投資目的で海外の不動産を購入し、気づかないうちに価格が上がっていたりすると、相続する子どもなどに予想以上の相続税がかかってしまうこともあるかもしれない。ここ数年、国税当局では海外資産にも目を光らせていて、所得税や相続税の税務調査で発覚する海外資産の申告漏れの件数は増加している。少しでも海外に財産があれば、国内の財産と合わせて申告は不可欠であることを覚悟しておこう。

海外での相続手続きの手間は、生前の対策で軽減可能

海外に財産がある場合、その財産の種類ごとに評価額を調べ、相続税がかかるかどうかを判断し、申告の準備をするだけでも通常より手間と時間がかかるだろう。しかし、大変なのは、そうした海外の財産を相続人が引き継ぐための手続きだ。
「海外の相続手続きでは、国内で通用する遺言書や遺産分割協議書がそのまま通用するとは限らない」と、早河さんは忠告する。 現地での相続手続きをできる限りスムーズに進めるためには、日本語の遺言書だけでなく、財産のある国の法律や書式に合わせた現地の言語による遺言書も、同時に用意しておくことが重要だ。
海外の金融機関には、口座の契約者が万一の時、預金等の受取人を指定できるケースがあり、これをしておけば、受取人に指定された人の手続きは簡単になる。
また、「ジョイントアカウント」という、夫婦や親子による共同名義の口座もある。この場合は名義人の一方が亡くなると、残された人が預金などをそのまま引き継いで利用することができるため、共同名義の人が相続する場合は手続きも比較的簡単だ。 不動産の場合は「ジョイントテナンシー」という合同保有の形態があり、これも相続時には合同保有者がその不動産を引き継ぐことができる。
これらは相続手続きの面では便利だが、どの方法でも亡くなった人が出した資金や所有分については相続財産に加算され、課税対象になることを忘れてはいけない。
気をつけたいのは、海外不動産の取得資金を夫がすべて出したのに、夫婦で合同保有のジョイントテナンシーにすること。そうすると、資金の一部は夫から妻への贈与とみなされ、日本で妻に贈与税が課せられる可能性がある。「不動産のように登記できる財産は、贈与の時期が明確でないときは、登記した時点で贈与されたものとみなされる可能性が高いことにも注意が必要」(早河さん)

一方、国によって、また財産の種類によっては相続手続きに「プロベート」という裁判所の検認手続きが必要なこともある。これに当てはまると、相続人にかかる時間と労力、費用などの負担もぐんと重くなる。次に、そのようなケースを紹介する。

プロベートが必要な場合は1~3年かかることも

相続に対しての税金の有無や手続きの方法は、財産のある国やエリア、州によって異なる。詳しくは当サイトの別項で紹介した(参照記事:https://souzoku.suumo.jp/article/1431)ので、ここでは省くが、プロベートが必要な国では、原則として、亡くなった人の財産はいったん遺産財団(エステート)に移され、裁判所の選任した人格代表者が財産の調査をして価格を査定し、債務や税金がある場合はそれらを支払ってから、相続人に分配される。
そうなると、日本と海外の両方で、同時に相続手続きを進めなければならなくなる。 プロベートの手続きを経て財産を引き継ぐまでには、早くても1年、長い場合は3年くらいかかることもあるため、相続手続きには相当な時間と手間がかかるだろう。

例えば、ハワイにコンドミニアムを所有していたケースで考えてみよう。 アメリカでは相続財産を不動産と動産に分けて、不動産はその所在地の法律にしたがって手続きを行う。ハワイにコンドミニアムがあれば、亡くなった人が日本に居住していても、ハワイ州の法律に合わせて、コンドミニアムについての遺産税の申告やプロベートの手続きが原則必要だ。日本とハワイでの主な手続きの流れは、下の図のようになる。

●日本とアメリカ(ハワイ州)に財産がある場合の手続きと流れ
(被相続人は日本国籍・国内居住の父で、相続人は国内居住の子ども2人の場合)

日本では相続開始日から10カ月以内に、海外の財産を含めて相続税の申告・納付が必要だが、ハワイ州の遺産税の申告は9カ月以内とやや短い。 ハワイでの申告やプロベートの手続きは、現地の税理士や法律家に依頼することになる。日本で依頼する際は、できれば国際相続に詳しい税理士や、海外にネットワークのある法律事務所などを探し、そこを通してハワイで手続きしてくれる専門家を手配してもらい、日本と現地の専門家同士で連携して進めていくというのが一般的だ。

日本と海外の両方で相続税や遺産税が課税される場合、日本の相続税額から外国の税額を控除できる仕組みもある。アメリカの場合、日米相続税条約によって基礎控除が拡大するため、遺産税はかからないケースも多い(州税は別)が、申告は必要なため手続きは煩雑。 また、プロベートが必要な国では、現地で通用する遺言書があるかどうかで手続きが若干異なることもある。
遺言書がなく、遺産分割協議もまとまらないと、プロベート後に分配される財産は相続人の共有財産となるため、不動産などの売却・換金はすぐにできないこともある。

シンガポールや香港など、相続税のない国でもプロベートが必要な国やエリアもあるため、 こうした地域に財産がある場合は要注意だ。またカナダの場合、相続税はないが、相続が起きたら、被相続人の財産はその時点の価格で処分されたものとみなされ、株式や不動産などは譲渡所得税が課せられる。

海外の財産は整理し、プロベートを避ける対策も検討を

海外に親の財産があれば、万一に備えて、子どもも一緒にその国の相続に関する税金や法律、手続きについて調べておくことは不可欠だろう。 「万一の場合の手間を考えると、親の財産が複数の国に分散している場合はできるだけ整理し、海外に残す財産は1カ所くらいにまとめておくほうがいい」と早河さんは助言する。そのうえで「日本語の遺言書のほか、財産のある国の方式に合わせた遺言書も用意しておくことは必須」と、早河さん。

また、海外への投資では、親子で資金を出してジョイントアカウントや、ジョイントテナンシーにするなど、プロベートを避ける方法も考えたい。場合によっては現地で信託を設定し、承継方法を指定するといった方法もある。そういう対策についても、できるだけ国際相続に詳しい税理士や法律事務所などに相談したほうがいいだろう。

国際相続への対応や準備には、専門家のサポートが欠かせない。

取材・文/光田洋子(インタープレス) 写真/PIXTA  取材協力/税理士・早河英太さん 東京国税局に採用後、財務省主税局・国税庁資産課税課等で、資産税制の企画立案・審理業務、国際的租税回避スキームに対応する業務や、国際資産税に係る税務調査等に従事した後に退官。大手税理士法人を経て、現在は国際資産税や事業承継を中心とした資産税全般の申告・税務アドバイザーとして活動中。税理士を対象としたセミナー講師や、税務専門誌での執筆も行っている。

 

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