2017年3月7日
ローン完済した実家を相続 買い手がいるのに売れない!?

ローン完済した実家を相続 買い手がいるのに売れない!?

相続したものの誰も住まない空き家となった実家。売却を検討したら売れそうなこと分かった。ところが、買主からはお金の都合はついているが今の段階で購入することは難しいとの回答が。理由は、抵当権の抹消登記を行っていないため。ローンを完済し終わったら、法務局での抹消登記手続きが必要なことは意外に知られていない。 結果、登記簿上で抵当権が付いたままになっており、売却時に複雑な手続きが必要なことが多々ある。事象や対策を紹介する。

ローン完済した家。買い手がいるのに売れないってどういうこと?

住宅ローンを完済したときの安堵感は大きい。30年以上コツコツ返済してきた人はその思いもひとしおだろう。しかし完済時には既に高齢で、子どもたちへの相続を真剣に考える年齢にもなっている人も多い。子どもたちに相続し、売却したお金を分けてもらえばいいと考える人も多いと思う。しかし、売るときに思わぬ落とし穴があったりする。
今回はそんな事例を紹介したい。
空き家になった実家があるAさん。実家は亡くなった父がローンで買ったモノだが、ローンは既に完済していた。母も既に亡くなり、現在は空き家のままになっている。そのため売却しようとしたところ、知人が古民家風の実家を気に入り、購入してくれることになった。 そこで売買の手続きを不動産会社に依頼したところ、このままでは売却できないと言われたのだ。ローンも完済しているはずなのにどういうことだろうか?

抵当権って何?抹消できるの?

理由は2つあった。一つは名義がAさんの父のままだったこと。もう一つは抵当権の抹消がされていなかったということだ。
通常、土地を相続した後は、名義変更を行うのが一般的だが、忘れている人も多い。 というのも、名義変更はいつまでにしなくてはいけないという期限はなく、固定資産税も「相続人代表者指定届」などを役所に提出すれば相続人である親族が納付できるからだ。 相続税がかからない土地であれば、ついつい後回しにして、気がつけば10年以上経っているケースもよくあるのだ。
今回の事例では、さらに抵当権の抹消もされていなかったのである。 もし名義変更をしていれば、そのときに不動産の権利がどうなっているのか分かるのだが、そのままにしていたため、抵当権まで気がつかなかったのである。
抵当権とは、金融機関がお金を貸す際に不動産などを担保にとる権利のことである。 住宅ローンの場合、お金を借りる条件として、主にはその住宅を担保にする。お金を返せなければ担保にした住宅が持っていかれることになる。
そんな抵当権があるままでは、買い手はローンを組めなくなるため売却が難しい。そのため登記簿上での抵当権の抹消手続きが必要になる。それをもって“借金もなにもない、自分自身の不動産である”という証明になるのだ。

ローンを完済しても金融機関では登記簿手続きはしない

ローンを完済すれば当然、抵当権もなくなると考えるだろう。しかし登記簿上での抹消手続きまでしておかないと、ローンを完済したとの証明ができないのだ。
これでは売りたくても売れないのは当然だ。
完済時に金融機関では抹消手続きの書類はくれるが、そのまま自動的に登記手続きを行ってくれるわけではない。手続きはあくまでも自分で行うのである。
そのことを知らずに手続きをしないで相続したというケースは多くある。なかには代々継いできた家なのに、大正時代の抵当権がついたままだった・・・なんてケースもある。 
では、どのようにすればよいのだろうか?
ローンを完済した際には、金融機関に依頼すれば登記手続き用の書類(図1)をくれる。その書類と申請書および登録免許税を法務局に持っていき手続きをすることになる。(図2) 手続きは司法書士または弁護士に依頼するか、自分でも行うこともできる。 

抵当権設定者が行方不明の場合、お手上げなのか?

住宅ローンでの抵当権設定者は金融機関がほとんどだが、それ以外に抵当権が付いているケースもある。例えば、代々引き継いできた家などで、金融機関ではなく個人からお金を借り、その個人が抵当権を設定させている場合だ。
この抵当権を設定した人が誰かすぐに分かり連絡が取れればいいが、全く知らない名前で今存在している人かも分からない場合、行方不明であることが証明できれば抹消手続きはできなくない。
その方法の一つとして、法務局(供託所)に供託金を払って、抵当権の抹消手続きを行う方法がある。「供託利用による特例」だ。この特例を使うには弁済期から20年以上経過していることなどの要件が必要だ。(図3)

抵当権を抹消していないということは、お金を返していない可能性もある。抵当権者が行方不明になってしまっては、その事実関係も分からない。
そのため国に供託金を預けることで抵当権を抹消できるというものだ。
この場合、法務局に相談し、抵当権者の捜索を行う(図4)などの事前調整をした上で抹消申請をすることが一般的だ。手間と時間がかかり非常に大変である。

(清澤コメント:捜索方法に関しては、法務局がどこまでやれば抹消手続きを受理してくれるかはケースバイケースになることが多いため、どれか一つで足りるとか、全部しないといけないということではありません。あくまで例示、ということになります。実務では供託利用の特例などのレアケースでは事前に法務局に相談し、これとこれでよいか?など事前調整をした上で抹消申請をすることが一般的です。)

供託する金額は「債権額+利息+損害賠償金」となる。
具体的な供託金の額は法務省のソフトを使って計算することができる。(※5)しかし、かなり複雑なので司法書士に依頼するほうがいいだろう。(※6)

(※5)「遅延損害金計算ソフトウェアのダウンロードについて」 法務省HP http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00073.html

(※6)供託金を払って外す場合、司法書士に依頼する場合など、手続きにかかわる費用
「供託利用の特例」によって抵当権抹消をする場合、十数万円以上かかるのが一般的。 なお、弁護士に頼むと100万円はかかる場合がある。 特例は内容によって使えない場合や、他の手続きのほうが容易に抹消できる場合(「除権決定による抹消」や「訴え提起による抹消」)があるので、報酬金額はさまざま。

抵当権が明治・大正・昭和初期の時代のものであれば債権額も数十円や数百円程度のため、利息を含めた合計額もさほど大きくない。そのため、供託金の額も少額で済むことが多い。 では、バブル全盛期の1990年ころのものではどうだろうか?
物価が上昇し抵当権の額も大きくなっていることが一般的だ。1990年にローンを組んで5年で返済したが、抵当権の抹消手続きをせず、20年以上経って、抹消しようと思ったが、抵当権者が行方不明になり、ほかに完済したことも証明できないため、普通に買うよりも何倍も供託金を支払うことになった・・・なんてこともありうるかもしれない。
しかし、実際には戦後になると金融機関とローンを組むケースがほとんどなので抵当権者が行方不明になるということはまずない。たとえ行方不明になっていたとしても抵当権は金額が大きいことから「供託利用による特例」が使えない可能性がある。

ちなみに供託金の返還(払い戻し)は、通常、貸主である抵当権者に通知され、還付請求をするのだが、今回の事例ではそもそもこの抵当権者は行方不明者であるため、通知されたり還付請求をすることはまずない。そのため供託されたお金は国庫に帰属されることになる。
家を相続するかしないかはさておき、不動産登記簿は最新の状態にしておくことにこしたことはない。親が高齢世代の場合、ローンは完済していることも多いが今まで述べたように抵当権抹消登記手続きをしていないケースがある。特に抵当権者が個人の場合、親の知り合いであっても子はその抵当権者を知らないケースが多い。また名義の確認も重要だ。
一度、親に確認し、名義や抵当権などの手続きができていなかったら手続きを行っておこう。
名義を変えるときに抵当権などの情報も分かるので、相続した場合は名義変更を忘れずに。

取材・文/大田和孝純(ライフプランアドバイザー) 取材協力・監修/清澤晃さん(司法書士/清澤司法書士事務所) 写真提供/PIXTA

 

合わせて読みたい 相続Q&A

スーモ相続 編集ディレクター
相続についてもっと知りたいなら

関連する対策タイプ

遺言・相続Q&A

親子で相続対策を進めるために

家族の連絡帳

家族の連絡帳
年齢とともに心配になる親のこと。親も子世帯の経済面や暮らしを気遣っています。
「家族の連絡帳」をプリントアウトして、書き出すことから親子のコミュニケーションを始めてみませんか?親子がよく話し合うことでそれぞれの悩みが解決するかもしれません。
実家の相続対策を詳しく紹介

「親と実家」を考える本

表紙サンプル
表紙サンプル
目次サンプル
実家の相続対策に役立つ

カタログ請求のご案内

建築会社や不動産会社が作成しているカタログは、商品やサービスの紹介だけでなく相続にかかわる一般的な知識も得られるものもある。無料で請求できるので、会社名やカタログ名で気になるものがあれば取り寄せて、プラン選びに役立てよう。
※こちらのサイトで紹介しているカタログは『「親と実家」を考える本』にも掲載されています。下の『「親と実家」を考える本』のカタログ請求画面から、お好きなカタログをご請求ください。