売却で新たな暮らし

相続が起こってから、遺産分割や納税資金のために実家を売却するケースもあれば、最近は元気なうちに自分たちの暮らしに合った住まいに住み替えるため、親自身が自分たちの家を売却するケースも増えている。その場合には自分たちの事情に合った依頼先を見つけることが重要だ。

実家を売却する時に知っておきたいこと

売却を検討する場合、まずは実家の売却価格の目安を把握することからスタートする。
また、売却益が出た場合は所有期間に応じた所得税がかかるため、
注意したい大事なポイントを紹介しよう。

実家はいくらで売れるのか、売却価格の目安をチェックする

まずは複数の不動産仲介会社に査定を依頼する

実家の売却価格は、不動産の総合サイトや新聞の折り込み広告などを見て、周辺地域の同程度の物件から相場を調べてみる方法がある。しかし、同じくらいの広さや築年数の物件でも、土地の形状や接道状況、建物の状態によって実際の売却価格はそれぞれ異なるため、不動産売買の仲介を行っている会社に売却の希望を伝え、土地・建物の情報を提供して査定をしてもらうのが早道だ。

仲介会社にも、広域にネットワークのある会社もあれば、地元の取引に強い地場の不動産会社もある。マンションの取引に強い、一戸建ての取り扱い件数が多いなどの違いがある場合も多いので、各社の特徴を調べて、できれば異なるタイプの仲介会社を複数選び、査定してもらうといいだろう。

仲介会社はそれぞれの取引実績や周辺相場、実際の物件の状態に合わせて売却価格の目安を出してくれる。違いが大きければ、その理由も聞いて、納得できる会社を選んでから実際に売却を依頼する会社を決めるといい。

農地の相続や売買での必要な手続き
農地として
相続
農業委員会への届出
所有者が
宅地など
他の用途に変更
農業委員会からの許可
農地として
売る
農業委員会からの許可
宅地など
他の用途で売る
農業委員会からの許可

※休耕地も農地に含まれる。
※登記簿上の地目ではなく
 実質的な農地であれば、届出や許可が必要。
※国や都道府県との取引は許可は不要。

少しでも高く売るために準備しておきたいこと

できれば購入または建築したときの土地・建物の図面などを用意しておきたい。一戸建ての場合、隣地との境界線があいまいだと実寸での正確な面積がわからず、売却後にトラブルにもなりかねない。地元の法務局で公図(登記所に備えられている土地の図面)を確認する方法もあるが、かなり昔に作成された公図だと実際の土地面積とは異なることもあり、相続税の評価額で損してしまうケースもある。相続後に測量が必要になると、時間も費用もかかるため、場合によっては親が元気なうちに土地の測量をしてもらい、境界線を確定しておこう。

また、実家が農業を営んでいると、宅地の一部が田畑として利用されている場合もあり、地元の農業委員会への届け出や許可が必要なこともある。また、地域によっては農地からの転用が制限されていて、売却先が限られるケースも少なくない。農業委員会や農地の売却に詳しい不動産会社、税理士などに相談してみるといい(右図参照)。

実家を査定してもらうとき、一戸建ての場合は庭木の手入れをしたり、玄関まわりや外壁などの目立つところをきれいにしておくことも大切だ。木造建築の場合、築20年以上の建物については査定価格がかなり厳しくなりやすい。しかし、国は中古住宅の流通を促進するために新たに評価基準を定めて、売却価格に反映しやすくしていく動きもある。

住宅設備の交換やリフォームなどをした履歴も価格に反映されやすくなるため、それらの資料も保管しておき、査定の時に提示して伝えることが重要だ。

売却後にかかる税金についても調べておく

不動産を売却して利益が出ると、それは譲渡所得となって、売却した人に所得税・住民税が課税される。売却時には不動産会社の仲介手数料(売却価格の3%+6万円が一般的)もかかるため、売却価格から税金と手数料を除いた分が手元に残るお金になる。
売却によって、実際に手元にはどれくらいお金が残るのかを知るためにも、税金について確認しておくことは不可欠だ。

不動産の売却益(譲渡所得)は、売却価格から最初に取得した時の費用や、売却時にかかった経費を差し引いて算出する。実家は代々もしくは祖父母から引き継いだ家であったり、かなり昔に建てたという場合は、最初の取得費がわからないこともある。そんな場合は、取得費を売却価格の5%とみなして計算するが、これだと譲渡所得が高くなってしまうこともある。取得費は公的な資料で査定する方法もあるので、税理士に相談を。

課税される譲渡所得があれば、保有期間が5年超か5年以下かで、所得税・住民税の税率が変わる。ちなみに相続で取得した不動産は、親の保有期間を引き継げるので安心だ。
また、マイホームの売却では、売却益が3000万円まで非課税になる特別控除が利用でき、さらに保有期間が10年超であれば一定額まで軽減税率が適用される。
買い換えの場合には、特定居住用財産の買換え特例で、課税が繰り延べられる制度もあるため、それぞれ条件などを確認しておこう。

譲渡所得税(売却したときの税金)の計算式
売却 [譲渡] 価格 x(取得費※1 + 譲渡費用※2)= 課税譲渡所得金額

※1 購入価格と購入にかかった諸経費
※2 仲介手数料、売却にかかった諸経費など
※ 取得費がわからない場合は売却価格の5%とするか、公的資料などで算定する方法があるので、専門家に相談を

長期譲渡所得(保有期間が5年超)の場合
課税譲渡所得金額 x 15% [所得税] 5% [住民税] = 譲渡所得税額
短期譲渡所得(保有期間が5年以下)の場合
課税譲渡所得金額 x 30% [所得税] 9% [住民税] = 譲渡所得税額

※実際の所得税には、復興特別所得税として所得税額の2.1%相当が上乗せされる

特例が適用になる居住用財産とは?
おもに居住用に使用している国内にある家屋と土地(仮住まいや別荘は対象外) 居住しなくなってから、3年目の年末までに売却する 家屋を取り壊して土地だけになった場合、1年以内に売却する
3000万円控除の特例の要件
売却した年の前年、前々年に、この特例や、居住用財産の買換え特例、譲渡損失の繰越控除などを受けていない 特例を適用するには、売却した翌年に必ず確定申告をする 所有者として居住している(または居住しなくなってから、3年目の年末までに売却)

2016年度の税制改正では、相続した実家が空き家になってしまった場合、空き家の売却にも3000万円の特別控除が適用される制度が創設される予定。ただし、細かい条件があり、一定の期間内に売却する場合に限られるため、これについてもチェックしておこう。

売却するときの手順と流れ

前に説明した通り、不動産仲介会社に査定を依頼して、正式に依頼する会社を決めたら、その会社と「媒介契約」を結ぶことになる。不動産媒介の契約には、図のように3種類の形態があるので、その違いを知っておこう(右表参照)。

仲介会社との媒介契約の種類
一般媒介 専属専任媒介 専任媒介
他の仲介会社への依頼 × ×
自身で売主を見つける ×
有効期間 制限なし 3カ月以内
指定流通機構への登録 義務なし
(登録は可)
7営業日以内 5営業日以内
契約の自動更新 ×(依頼者の申し出が
なければ更新できない)
業務の処理状況の報告 義務なし 2週間に1回以上 1週間に1回以上

一般媒介契約は、1社のみならず、複数の会社に依頼することができるため、人気の高い地域で確実に売れそうな物件の場合、広い範囲で早く売却先が見つかることもある。

一方、専任媒介や専属専任媒介は、1社のみとの契約になるが、その分、熱心に動いて売却先を探してくれることが多い。どちらがいいかは物件によっても異なるので、査定を依頼するときに契約方法についても聞いてみて、その会社の対応も含めて検討しよう。

売却のみの場合

売却を依頼する仲介会社と媒介契約を結んだら、最初に査定した価格を参考に売り出し価格を決め、売却活動をしてもらう。指定流通機構(レインズ)に登録したり、自社サイトや広告などに情報を掲載してもらったりする方法が一般的。

仲介会社から経過報告を受けて購入希望者が現れたら、価格や引き渡し時期を先方と相談して決める。購入希望者と条件の折り合いがつき契約が決まったら、仲介会社の手配で「売買契約」を結び、手付金を受け取る。この時に仲介会社に手数料の半分を支払う。

最後に約束した時期までに残りの代金を受け取って、物件を引き渡す。仲介会社に残りの手数料を支払い、固定資産税などの精算をすれば完了となる。

ちなみに譲渡所得の税金については、翌年の確定申告で申告・納税するが、売却によって譲渡損が出た場合は、その年の所得と損益通算したうえで、翌年以降に損失分を繰り越せる制度もあるので、税務署や税理士に確認して申告するといい。

買い換えの場合

今の家を売却して、その資金を新居の買い換えに充てたい場合、新居探しも並行して行うことが必要になる。売却相手への引き渡し前に新居が決まり引っ越しが可能なら、借り住まいをせずに引っ越しも1回で済む。新居が決まってもすぐに引っ越しが難しい場合は、売却相手と交渉して引き渡し時期を調整してもらう方法もある。

ただし、売却相手が見つかるまで時間がかかるような場合、先に新居が見つかっても購入契約は慎重に。「今の家が売れない場合は契約を白紙にする」という条件をつける方法もある。売却と購入物件の仲介会社が同じ場合は、そのあたりも配慮してもらい手続きがラクになることもあるが、価格の面で納得できるかはしっかり検討が必要だ。

取材・文/インタープレス 情報提供日 / 2016年2月18日

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